自分を支えてくれたもの②-マンガと本たち




やはり大学時代だったと思いますが、いろんなマンガや本に助けられました。フィクションもそうでないものも、「物語」の持つ力というのは相当なものだと思います。

いろいろありますが、マンガでは、吉田秋生の「カリフォルニア物語」や清水玲子の「竜の眠る星」。本では、中島梓の「わが心のフラッシュマン」など。

かなり年齢が知れる 😉 というか、中島梓は別としても、マンガも若い人はほとんど知らないでしょうね。しかし一部の名作がすでに絶版になってるのは悲しい・・。

 

「わが心のフラッシュマン」中島梓

 

時に〈不幸〉な状態を積極的に選ばせ、時に〈死〉をも甘美なものとして選びとらせる、人間の「物語欲」とはいったい何か―。「フラッシュマン」に始まって、三島由紀夫からアラビアのロレンス、ダイエットから恋愛までを縦横に語り明す物語論。

ー中島梓(1991)『わが心のフラッシュマン』ちくま文庫 裏表紙より抜粋ー

中島梓は「グイン・サーガ」などで知られる作家、栗本薫の評論家としての名前。ちなみに、グイン・サーガは正伝だけで130巻、ギネスには載らなかったらしい世界最長小説で、栗本の死後も別の作家たちによって続きが刊行されているバケモノ小説。

「フラッシュマン」とは、当時放送されてた戦隊ヒーローモノTV番組の名前です。この本では、人間が本質的に、その肉体としての生命よりも大切な「物語欲」を持っていること、そこから導き出される、フィクション=物語の必要性について愛をこめて語られています。

もともと自分は、たぶん中学生くらいに『すべては幻想である』という岸田秀の「唯幻論」を知って、激しく共感したくらいですから、その影響も受けている中島梓の考えはすんなり入ってきました。

この本では、まず人間は自らの「自己イメージ」に縛られた存在である、もっと言えば、「自分と言う内宇宙の囚人」であるということを言っています。つまり、本当に物自体、現実に触れることはできず、それぞれの幻想の中で生きている存在であるということです。まあ極論すればそりゃそうだと思います(笑)。

彼女は、しかしだからこそ物語が必要だと言います。往々にして力関係になりやすい他者とのかかわりの中でなく、物語、また他の音楽や絵画・・それらを通して、自分を脅かす存在でもある他者が自分と同じ人間であることを知る。いわば物語は「世界への扉」を開くものである、と。

彼女は小説もそうですが、表現が非常に饒舌(じょうぜつ)、つまり言葉をやたら多く使います。本人も書いてますが、細かい意味が正しいかどうかは二の次で、脳から出た言葉をそのままぶつけていくタイプ。だから合う合わないがあるでしょうが、こういう書き手は、波長が合えばカタルシスを味わえます。

この本もそうですが、彼女のエッセイ「息子に夢中」も含めて、自分にとっては彼女は「精神的なお母さん」(笑。でもほんとにそんな感じ)と思ってました。若いころは特に両親とはいろいろあったこともありますが(今は違いますが)、それ以上に自分が求めてたものと何か一致したんでしょうね。

 

「カリフォルニア物語」などのマンガ

 

吉田秋生の「カリフォルニア物語」は、厳格な父親に反抗して家を飛び出した、主人公ヒースと、途中でついてきたスラム育ちのイーブの物語(絵はその昔、一場面を描いたもの)。

60年代的なヒッピーみたいな匂いもする。思春期の成長物語と言われているみたいですが、出てくる人物が魅力的で、人間を深く知ってる人が描いたことが分かる作品。私は後の作品よりもこれが好きです。

印象に残るのは、長距離走をやっていた主人公が、トラックをぐるぐる回るのでなく海岸を走ってみたときの気分を話すシーン。

ずっと同じところを回るのでなく、「いけるところまで、遠くへいってみたい」というのは自分の中にずっとある感じもします。生きてる限りもっと知りたい、体験したいとか。

そういう方はきっとこのマンガは合うと思います。まあ「大人になる」ことも必要とは思いますが^^;

 

清水玲子「竜の眠る星」はもし”泣けるマンガ大賞”*があったら間違いなくベスト3には入るんじゃないでしょうか。確かに最後で泣ける。何回読んでも泣けてた記憶がある。きれいな名作だと思います。

*ネットで検索したらいろいろ出てきますが・・よくは知らないものが多いけど、、んーー。

 

もう一つ、これも傑作と思いますが、水樹和佳子「イティハーサ」。絵はやはり少女漫画系なので、好みはあるでしょうが、人間の存在、善と悪の戦い、神とは?、そして魂の輪廻・・というテーマを見事に物語に集約させている。そしてやはり最後で泣ける。こういう話は、ある種のインスピレーションが降りてきたものだろうと思います。

 

話はちょっと脱線しますが、自分は中学生の頃、家近くのふつうに建っているドラックストアの建物を見て、とつぜん強烈な違和感を感じたことがあります。

言葉にしたら、「これは変だ。世界がこんな薄っぺらいもののはずがない」「今見てる世界は全部嘘かもしれない」という感じでしょうか。

ちょっと病んでた(笑)のかもしれませんが、意外とこういうことって感じる人はいるんじゃないかとも思います。自分の場合、そういう性質だったので、いかに現実に着地するかというのが一つの課題だったと思います。

そういう意味でも、人のつくったものって自分にとっては逆に現実との橋渡しというか、自分の世界を生きていくうえで物語や音楽がないと、世界の彩りそのものがなくなってしまう、という感じもあったと思います。

 

完成度の高い物語は、マンガだと少女マンガ(というか、女性が描いたもの)に多い印象がありますね。読んだ時期がちょっと違うけど、忘れていけないのは萩尾望都さん。この人も特に精神分析や心理学の知識があるでしょう。「残酷な神が支配する」は性的虐待が主テーマの重く深い作品。

残酷な神が支配する (1) (小学館文庫)

他には、そこまで知られてないかもしれませんが、「メッシュ」も親子の葛藤など「カリフォルニア物語」と重なるシリアスなテーマでありながら、重すぎず軽すぎずで非常に好きな作品です。あとは、「訪問者」。泣けます。

メッシュ 1 (白泉社文庫)訪問者 (小学館文庫)

 

萩尾望都は「24年組」。24年組では、ちょっと系統は違うけど、大島弓子「毎日が夏休み」も好きだなー。

大島弓子選集 (第13巻)  ダイエット

やっぱり中島梓も言うように、文学よりいい物語が好き。最近あまり見つけてませんが、また出てきてほしい。

 

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